雪が激しく降り積もる地域で、長年試行錯誤され続けた除雪・排雪作業。かつて活躍した雪かき車として有名なものの1つに、キマロキ編成が挙げられる。

豪雪時に活躍したそのキマロキ編成が北海道の名寄駅近くに保存展示されているので、見学に伺った。

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キマロキ編成は、機関車、マックレー車、ロータリー車、機関車のそれぞれの頭文字を取った呼び名。豪雪の時のみ活躍した編成だ。

通常、線路上の除雪はラッセル車が行う。跳ね除けた雪は線路わきに積もっていき雪壁ができるが、その雪壁の高さが増すと線路側に倒れてくることもある。そういった事態が予想されるときにキマロキ編成が出動し、雪壁を壊して遠くに跳ね飛ばす役割をしていた。


JR北海道宗谷本線の名寄駅から南に歩くこと15分程のところにある名寄公園に、キマロキ編成が保存されている。屋外展示が始まって40年以上経過しているが、冬季は雪害対策がなされたり定期的に塗りなおしも行われたりしているようで、美しい状態が保たれている。
保存車は計5両で、2両のSLとマックレー車、ロータリー車と車掌車が展示。ここから、1両ずつ細部を見て行こうと思う。

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9600形蒸気機関車。有名な蒸気機関車の通称"キューロク"である。編成の先頭に展示されている。
前面には、準鉄道記念物に指定されたことを記念したヘッドマークを掲げる。階段が設置されているため、運転席や炭水車の見学も可能。

キマロキ編成の出動時は、あらかじめ線路上の雪がある程度取り除かれていることが条件。そのためSLが先頭でも平気であり、スノープロウ程度の対策で良いようだ。


続いて2両目。
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マックレー車キ911号機。キマロキはマックレー車の頭文字を取ってるが形式は「キ」を使っているのがちょっとややこしい(笑)。梯子が付いているが車内見学は出来なかった。

この車両はかき寄せ式雪かき車と呼ばれる車両で、雪壁を崩してかき集める仕事をする。

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この両サイドに展開する大きな羽で雪をかき集め、ロータリー車にある回転刃に送る。
この機関車+マックレー車の2両が先行して雪を集め、後からやってくるロータリー車+機関車が雪を跳ね飛ばす、という連携で除雪を行われていたようだ。

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保存されている“キマロキ”の編成は主に回送時に見られたらしく、この4連で編成を成すときは連結棒を用いてマックレー車とロータリー車を繋いでいた。見たところ、赤く塗られた(当時赤かったのかは不明)ロータリー車の回転翼付近に連結棒が噛み合わさる仕組みらしい。

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これとは別に連結器があるのがおもしろい。除雪用パーツの出っ張りで直接の連結は難しいために連結棒が用いられたのだろう。


3両目、ロータリー車へ。
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ロータリー車キ604号機。回転式雪かき車という車両で、マックレー車キ911号機が集めた雪を回転式の巨大な羽根で遠くへ飛ばす。

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ロータリー車の回転翼を見る。

この大きな回転翼で雪を取り込み、先ほどの写真でライトと車体の間にある排雪口から雪を吹き飛ばしていた。
ラッセル車が出動できないような大雪が線路に積もった際には、“ロキ編成”のみで出動し一気に除雪を行うこともあったらしい。


後ろに繋がれたテンダー車には、回転翼を回すための石炭が積まれていた。キ604号機・テンダー車ともに梯子が付いており、中を見学することができる。
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蒸気機関らしい設備の車内。腐食・劣化はあるものの綺麗な状態。訪問時は夏だからか蜘蛛の巣が半端じゃなく、引っかからないように取り除きつつの撮影となった笑。
現代のラッセルのように機関車に取り外し可能なラッセルヘッドをつけるという形ではなく、役割に対して1つの車両があるという形態である。時代の流れと技術の向上が感じられる。


キマロキの2つ目"キ"で4両目のSLへ。
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D51形蒸気機関車398号機。本線上ならばロータリー車を推進するポジションである。
全く関係ないが関東で現役の498号機と100番違い。塗装ムラはあるものの498号機に近い綺麗な状態なのが嬉しい。これも運転台見学が可能。


そして編成最後尾へ。
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車掌車ヨ4456号車。この車両に乗車して数人、数十人体制で作業を行う。

先ほどのマックレー車の羽の故障防止や雪かきの能力から、作業は低速で行われていたため、除雪には数日を要していたらしい。長い時間をかけての除雪作業は相当な労力だろう...
キマロキに乗務する保線員以外にも、線路の除雪には多くの方が携わっている。除雪だけではないが、今も昔も鉄道を走らせるために頑張ってくれている方々には頭が上がらない。



さて、このキマロキを見学するにあたっていろいろ調べて歴史や仕組みに驚いたのだが、それ以上に驚いたのがマイクロエースが模型化しているという点。ロータリー車の羽根が回転する仕組みも備えているようで、再現度の高さに驚いた。あそこの模型化車種の幅広さを思い知った笑。


にしても、40年以上保存されていながらこの綺麗さというのは大変すばらしい。状態維持に相当な労力がかかっていることだろう。(屋内の方が保存しやすいというのが前提だが)早いうちに屋内展示されることを願いたい。
また、このキマロキ編成は旧名寄本線が敷設されていた場所に展示されているというのも魅力的だ。いずれ廃線探索をしてみたいところ。当時の遺構がどれだけ残っているかはわからないが...。


今回はこの辺で。



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